監督にきく
劇団ぎょう座の監督である和田昌俊に質問コーナー
絵コンテなぜ描くの?
昔、海外ドラマに出演した時に見せていただいた絵コンテを参考にしてます
絵コンテがあることで俳優さんが自分の身体のどこからどこまで映るのかが明確にわかりますし、無駄なカットを撮らなくてすむし、カメラの動きも考えて絵コンテ書いてるので、現場で悩む時間がなくてすむんですよ
そして何よりセリフを覚えるのが最小限で済むので役者さんの負担が少ないんですよね
そのカットで使われてるセリフだけ覚えてればいいわけですから
事前に絵コンテを送ることで、あっここのシーンはここまでセリフを覚えてればいいんだなってわかるし、最悪この辺にカンペ仕込めるなあとか考えられるから、役者さんにとっても楽かなあって思ってます
そして使うカットが決まってるのであとはお芝居だったりライティングだったりもろもろをテイクを重ねることでブラッシュアップしていけるんで、短い時間でクオリティを上げることができるなあって思ってます
さらにカメラマンの人がどういうカメラワークなのかが事前にわかってるので準備が楽かなあって思ってます
もっと言っちゃうと、最悪ぼくがいなくてもどうやって撮ればいいかわかるのでぼくの身になにかあっても作品を完成させられるかなっていう保険でもありますね
脚本段階では描ききれなかった情報とか追加キャストや追加のセリフやアドリブとか細かい演技の指示なんかも絵コンテで情報共有できるので、映像だけでは説明不足だった部分も絵コンテをみるとわかることもあるので、ぜひ映像作品を楽しんだあとは絵コンテも見てみていただけると新しい発見があるかもしれません
カメラワークもちゃんと理由があってあえてそういう動きにしてるっていうことが書いてあったりするので、絵コンテをご覧になってみていただけるといろいろわかることもあると思います(例えば『わたしの帰る場所』という作品は下から正面までという動きばかりにあえてしてるんです。主人公の女の子を見守るお父さんの幽霊の目線なんですよ。ラストカットでは成仏できたので主人公の目線つまり正面から上に上がるカットになっていたりします。色味も薄かったのが、ラストカットだけカラフルになっています。こういうことは脚本ではかけないので絵コンテでこのカメラの動きは亡くなったお父さんなんだよということがわかるようになっています)
撮影でのこだわりって?
役者さんが魅力的に見えるように映すことに一番こだわっています
映像作品としてのクオリティよりも役者さんが魅力的に映っているカットの方を採用してます
なので映像作品としてはカメラの動きだったり細かいところが不安定な画面になってることもあるんですけど、役者さんの表情だったりがいかに魅力的に映っているかにこだわって撮っています
だからぎょう座の作品は顔映りが多い映像ばかりになっています
ほぼ必ずカメラ目線の顔のドアップがあります
決めショットって呼んでるんですけど、そこだけは毎回こだわって撮ってます
じつはぎょう座の作品は後ろ姿とかがほとんど出てこないんですよ
できるだけ役者さんの顔を映していて、それも可能な限り正面から捉えるようにしています
さらにいろんな表情を一つの作品で見れるように工夫して撮影しています
例えば笑顔だったり悲しい表情だったりが一つの作品の中でハッキリと映っているようにこだわって撮影しています
そのほうが役者さんの魅力が引き出せると思うからです
だからぎょう座の作品は感情の切り替えが多いからそういう意味では演じるのが難しいかもしれませんね
でも感情表現が上手く映るようにアドバイスしてますし、うまく撮れるまでテイクを重ねるようにしています
だから極端な話、和田昌俊が1人で映っているシーンはこだわらないのでワンテイクで済ませちゃうことが多いです
いちばんこだわっていないのは和田昌俊1人だけのカットですね
映ってりゃいいやくらいの感覚
変態ものが多くないですか?笑
変態ものが多い印象はコメディ作品のことだと思うんですけど
劇団ぎょう座ではシリアスな作品も作っています
できるだけ交互になるように作っているんですけど、シリアスな作品ばかりにしないのには理由があって
ぎょう座の作品のコンセプトを考えた時に、能を参考にしました
昔、能をやっていたんですけど、能って一日を通してプログラムを組むんですよ
午前中はこういう作品を演じて、午後はこういう作品を演じるっていう大まかなくくりがあって、例えば幽霊が出てくる作品は夕方から日没にかけてやるっていう伝統があるんです
そしてその幽玄な世界の合間に狂言っていうコントみたいなコメディ作品を挟むんですよ
ぼくはこのシリアスとコメディを交互にやるスタイルが日本人の昔から馴染みのある飽きないプログラムであり、とても贅沢なコンセプトだと思うんです
だからぎょう座の作品は幽霊が出てきたり幽玄な世界観を表現していますが、コメディ作品も作るようにしていて、重い作品ばかりにならないようにしています
決して変態ものばかりではなくって、社会問題を意識したシリアスな作品も作っていますので、ぜひいろいろ試してみていただけたらと思っています